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ガンのコホート研究報告書

昭和63年(1988年)から昭和64年(1989年)にかけて、佐久市の住民の皆様(約28,000名)にがんのコホート研究にご協力いただき、生活習慣や医学的データを集めさせていただきました。それにより、現在までにいろいろな研究成果がまとまりましたので、がんのコホート研究の概略と、主な成果を発表いたします。
胃がん家族暦のある方は、家族暦のない方に比べ、男性で1.6倍、女性で2.4倍胃がんで死亡しやすい。
胃がんの家族暦とピロリ菌感染を同時に有する女性は両者ともない女性に比べ約5倍胃がんに罹りやすい。
男性喫煙者の胃がん死亡は1.3倍。1日の吸う本数が15本以下でも胃がん死亡は増加。
胃がんを予防するためには…。
緑黄色野菜や果物の摂取頻度が多いほど、特に男性で、肺がんで死亡しにくい。
肺がん死亡危険度が非喫煙者並みになるには、男性では15~20年必要。
糖尿病のある人は肝がん死亡のリスクが増加。
女性の肥満は結腸がん死亡と関係がある。
乳がん発生リスクは、1日15g以上飲酒で約3倍。
喫煙者の膵がんの死亡リスクは1.6倍。コーヒー多量飲用、糖尿病歴が長いとリスクが上がる。

がんのコホート研究とは

疫学研究の手法の1つであるコホート研究では、ある要因を持つ人と持たない人(例えば、喫煙者と非喫煙者)を何年にも渡って観察し、病気の発生(あるいは死亡)状況を調べます。そして、ある要因を持つことは持たないことに比べ、その病気になりやすさを何倍くらい上げるかということを推計していきます。今までにそのようにしてわかってきた代表的な研究成果は、たばこを吸う人は吸わない人にくらべ肺がんになりやすいということです。

しかし、日本人の生活習慣(例えば、喫煙習慣、食習慣、運動習慣など)は最近、大きく変化してきているといわれています。そのような状況の中、がんによる死亡は、数、率ともに年々増加していますので、有効な治療法を研究するだけでなく、日本人における適切ながん予防法を確立すつことが必要と考えられています。

そこで、文部科学省(当時文部省)の科学研究費の助成を受け、青木國雄名古屋大学教授(当時)を中心に、他施設が協力して、1988年に大規模なコホート研究が開始されました。このコホート研究は、全国45地区の約12万人の一般の方々の協力を得て、最近の日本人の生活習慣ががんとどのように関連しているかを明らかにし、増加しつつあるがんの死亡や羅患に対する予防策に資することを目的としてきました。そして今までに数多くの結果を専門誌などに報告しています。

問診内容、血液測定結果等の個人情報の取り扱い

全ての情報は、各施設でコンピュータに電子情報として入力され、氏名や住所を除いた電子情報が事務局(名古屋大学医学部予防医学)に送付されました。事務局では、個別のデータに遡ることなく、全体の情報をまとめています。

インフォームド・コンセント

原則として、調査票の表紙に「調査への協力のお願い」として研究の説明をし、それぞれの方から署名をいただくことで、研究内容の説明と同意としてきました。

研究追跡期間の延長について

調査研究をはじめたころに想定した研究期間はおよそ10年でしたので、現在、見直しの時期を迎えています。そこで、さらに2009年まで追跡期間を延長し、10年のコホートでも検討できなかった数の少ない部位がんの検討を主目的として継続することとしましたので、あらためて本研究に参加いただいた佐久市の皆様にご協力をお願いいたします。